『ビジネスに戦略なんていらない』平川克美
仕事をしはじめて何年か経った時に、
この本に出会い、自分の仕事にたいする向き合い方を考えさせてくれた
自分にとって大切な一冊です。
改めて読み返してみた際に
やはり多くの発見があり
自分の知識として血肉化するために
何回かにわけて、このブログでも考察してみたいと思います。
さて、早速本題。
「ビジネスに戦略なんていらない」というなかなか挑発的なタイトルですが
著者は決して「戦略」という方法論を間違っているとか、役に立たないと言っているわけではなく
数あるフレームワークのなかの一つにすぎないはずの「戦略」という好戦的なタームに
昨今のビジネスの文法がとらわれ過ぎているのではないかという疑問を呈しているわけです。
ビジネスはもっと複雑で豊かなコミュニケーションであるはずだと
なぜ、人は自らが発明したビジネスという魅力的で豊穣なコミュニケーションを戦争というつまらないアナロジーで語りたがるのでしょうか?
多くの人がビジネスを戦争のアナロジーで語りたがる理由は、戦争の前では全てのプロセス、戦術、戦略は「勝つか負けるか」という結果に奉仕するためだけの意味しか持たなくなり、
ビジネスをそのように考えると、単純でわかりやすいゲームになるからでしょう。
わたしが本書で試みたいのは~中略~
ビジネスプロセスを「収益」や「売上」の手段という地位から引き上げて、ビジネスプロセスそれ自体に「価値」を見出そうということなのです。
かと言って
著者はビジネスを正義や倫理、道徳を指標とするものではなく、あくまでも損得勘定を基本とした営みであることを強調しています。
ビジネスとは損得勘定で物事を考えることであり、正義や倫理、道徳を指標とするわけではないということには全面的に同意を与えたいと思います。ビジネスはどこまでいってもお金儲けを目的とした活動です。
どんなに優れた哲学的な知見を有してあたとしても、車のディーラーならば「売れてナンボ」なのであり、どんなにクリエーティブな才能を有していたとしても、デザイナーは顧客が買ってくれなければただの「ゴミ」であるという事実を受け入れるところからしかビジネスを開始することはできないのです。
著者は個人の資質や倫理観といった「本音」が
モノやサービスを媒介としないと発揮されないビジネスの入り組んだコミュニケーションの仕組に面白みがあると言います。
ビジネスの世界での倫理や価値観はひとりひとりの生の現実の中の倫理や価値観とはしばしば倒立して現れるということなのです。
ビジネス特有のコミュニケーションの振る舞いを著者は
「一回半ひねりのコミュニケーション」と評しているのですが
少し長くなりそうなので(自分の頭を整理するためにも)
このあたりは次回のブログで再考してみたいと思います。