月ごとの、小説や詩のおすすめの一冊をご紹介していきます。今回は1月です。2018年になりましたね。
おすすめの小説
宮沢賢治。知らない人はいないでしょう。「雨ニモマケズ」が有名ですね。イーハトーヴ(岩手)の詩人なだけあって、寒い冬のイメージの詩が多いように思います。中でもいちばん好きな1月に読みたい詩は、「永訣の朝」です。はじめのほうだけご紹介します。
けふのうちに
とほくへ いってしまふ わたくしの いもうとよ
みぞれがふって おもては へんに あかるいのだ
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)うすあかく いっさう 陰惨(いんざん)な 雲から
みぞれは びちょびちょ ふってくる
(あめゆじゅ とてちて けんじゃ)
「あめゆじゅとてちてけんじゃ」
タイトルは知らずとも、このフレーズを聞いたことがある人は多いのではないでしょうか?僕はこの言葉の響きが大好きです。
宮沢賢治の特徴は、何と言ってもオノマトペの独特さです。いくつか例を挙げてみます。
間もなく地面はぐらぐらとゆられ、そこらはばしゃばしゃくらくなり、象はやしきをとりまいた。(オッペルと象)
もう誰だって胸中からもくもく湧いてくるうれしさに笑ひ出さないでゐられるでせうか。(イーハトーボ農学校の春)
白いシャッポをかぶって先生についてすぱすぱとあるいて来たのです。(風の又三郎)
そしてジョバンニはすぐうしろの天気輪の柱がいつかぼんやりした三角標の形になって、しばらく蛍のやうに、ぺかぺか消えたりともったりしてゐるのを見ました。(銀河鉄道の夜)
ほかにもいろいろありますが、日本語っていいなぁ、と思うようなかわいい擬音がいたるところに使われています。「あめゆじゅとてちてけんじゃ」は擬音語ではなく、「雨雪(みぞれのこと)を取ってきてちょうだい」という意味です。病に伏せた妹が、お兄ちゃんにそれをねだっているのですが、そこに両者の深い優しさがあります。繰り返されるこの言葉も、お話の内容と相まって、とても荘厳で美しい言葉の響きを感じられるのです。ぜひ、ご一読ください。
みなさんも、雪の日の朝なんかに、宮沢賢治を読んで静かで素敵な1日を過ごしてみたらいかがでしょうか。