「なにもかもうまくいくわけじゃないんだから、なにもかもうまくいかせようとするのは、技術的にはまちがった考え方だ」というのは、阿佐田哲也さんの有名な著書『麻雀放浪記』の一節です。ギャンブルは、下手をすると身を崩す毒になりますが、時として芳醇な人生を生きるための薬にもなります。
ギャンブル学入門、本日は2回目です。
私はギャンブルの中でも、とりわけ麻雀を嗜みます。
たとえば、毎年正月には、高校時代の同級生が20人程度集まり、麻雀大会を行っています。
麻雀には古来根強い人気があり、最近では、麻雀をプロスポーツに、という動きも活発で、2022年の北京冬季オリンピックに向け、国際麻雀連盟がIOCへ室内競技の正式種目として申請していたりもします。今日は、そんな麻雀のお話です。
『麻雀』
まず、麻雀のルールを簡単に説明しようと試みます。
- 麻雀は、4人で行うゲームです。(3人でする場合もありますが、基本的には4人でするものです。)
- 麻雀は、牌(ハイ)という駒で遊びます。
- 麻雀は、牌(ハイ)を14枚揃えて完成形を作るゲームです。
- 麻雀は、ルールで決まっている完成形があり、それを役と呼びます。役によって、得点が決まっていて、より揃えるのが難し役ほど高得点となります。
- 麻雀は、1ゲームを1局といい、1局終わるのに10分~20分。それをだいたい8回前後するのを1セットとすることが多いです。この1セットのことを、半荘(はんちゃん)と呼びます。
…と、だいぶ簡潔に説明してみたものの、おそらく、麻雀のことを何も知らない人は、どんなゲームなのかあまり想像がつかないことでしょう。
つまり、麻雀は、ルールが複雑で覚えることもたくさんあるゲームなのです。複雑なルールを理解している人間が、4人、しかも長時間(だいたい1半荘が終わるのに1.5時間。それを数回繰り返すことが多いです。)かけてやるゲームなので、ゲームをするまでのハードルがギャンブルの中でだいぶ高めです。しかし、その分とても魅力的で、奥がとんでもなく深いゲームです。
麻雀は、ゲームが長く、プレイヤーのゲームの仕方によって勝敗がかなり左右されるギャンブルです。なので、他のギャンブルと違い「選択の機会」がとても多いのです。
たとえば先に上げた宝くじのように、「運だけ」とは程遠いゲーム性があります。しかし、そこはギャンブル。ゲームには必ず「運」が色濃く関係してきます。
どんなにうまくプレイしても、(麻雀では打つ、と表現します。)運がなければ勝てない。どんなに下手でも、運があれば勝つことがある。1ゲーム1ゲームは、運によっても勝敗が分かれます。(私見ですが、宝くじが運の影響が100、競馬が運の影響が70と定義すると、麻雀は1ゲームでの運の影響は30程度でしょうか。)これを何回も繰り返していくと、1回1回の運の良し悪しではなく、運の流れ、運の方向性のようなものが見えてきます。
作家の伊坂幸太郎は、さまざまな本の中で「未来は神様のレシピで決まる」というような表現を何度も使っているのですが、これは、人にはわからない(偶然や運としか思えない)ようなことも、神様はそのロジックを知っているんだ、というような意味で使われます。麻雀は、この「神様のレシピ」に少し触れることができる、少なくとも、その存在を身近に感じることができるゲームです。
よく、スポーツなどでも試合の実況などで「流れが来た」、「流れが変わった」なんで表現をしますが、麻雀は、「流れを作る」ゲームであり、いかに運とうまく付き合うのか、をよくよく教えてくれるゲームなのです。
たとえば、私は運について麻雀でこんなことを学びました。
- ツイていないときはとことんついていない。ツイていないときに闇雲に勝負に出るのは思考停止と同じ。
- ツイているヤツに張り合うには、正面からのぶつかり合いか、だまし討ちのようなスマートさが必要。あわよくば、というどっちつかずが一番勝てない。
- 運が悪くてもじっくり我慢して待っていると、必ず運が向くきっかけがやってくる。そのときの振る舞いで勝敗が決まったりもする。
- 運が良いときはとことん良い。むしろ自分の運の良さを信じられなくなったときに転落する。
これはそのまま、私のビジネスでの指針にも繋がっています。「僕の経営スタイルは麻雀と似てる」と言っていたのはサイバーエージェントの藤田社長ですが、麻雀は、人生の、特に勝負の賭け方、賭けどころを教えてくれるゲームだと思います。
そんなわけで、ギャンブル学から見た「麻雀」は、
【決断の重要性】 …★★★★★
【期待値】 …★★☆☆☆
【ゲーム性】 …★★★★★
【新しくはじめる】 …★★☆☆☆
【気軽にできる】 …★★☆☆☆
【人生の教科書】 …★★★★★
【認知症予防】 …★★★★★
となります。まだまだ語り足りませんが、今回はここまで。
なお、本コラムは身を滅ぼすようなギャンブルを推奨するものではありません。ギャンブルを知り、人生をよりよいものにするための一助となる学問のおはなしです。
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ギャンブル学入門 その1