わたしと小鳥とすずと 著:金子みすゞ
童謡詩人、金子みすゞの詩集です。
いくつかの詩集をあわせて編集しており、たくさんの詩が載っている文庫本です。
こころを正しい位置に戻してくれるような、みずみずしい詩が多いです。
ゆっくりしたい休日などに喫茶店にもっていったりする一冊です。
中でも好きなのは、有名な「こだまでしょうか」です。
こだまでしょうか
「遊ぼう」っていうと
「遊ぼう」っていう。
「馬鹿」っていうと
「馬鹿」っていう。
「もう遊ばない」っていうと
「もう遊ばない」っていう。
そして、あとで
さみしくなって、
「ごめんね」っていうと
「ごめんね」っていう。
こだまでしょうか、
いいえ、誰でも。
愛さないの 愛せないの 著:寺山修司
「魔法使い」や「忍術使い」のように、「ことば使い」だった寺山修司。
私が未だに叶えたい夢は、彼のような「ことば使い」になることです。
寺山修司らしさにあふれたこの詩集は、彼自身の詩に加えて、「人生処方詩集」というものが掲載されています。
それはつまり、
人生にくたびれたらこの詩を、初恋の人が忘れられたかったらこの詩を、もてなくて寂しかったらこの詩を、
と処方箋のようにいまの症状(気分)にあわせて詩を紹介しているのです。
彼らしく、彼自身の詩とほかの人の詩をまぜこぜにして掲載しています。
特に好きなのはこの詩です。
いちばんみじかい抒情詩
なみだは
にんげんのつくることのできる
いちばん小さな
海です。
愛の詩集 著:室生犀星
ふるさとというものに、ずっとあこがれを持っています。
それは、私がそもそも「家出」にあこがれをもっていることに起因するのですが、
東京生まれで、「田舎から飛び出してきた」経験がない私にとって、ふるさととはそれ自体が決して手に入らない理想郷のようなものです。
そんなあこがれからか、学生時代にこの詩集の「ふるさと」を暗唱しました。
試してみたら、いまでもすんなり全文言える。私の「ふるさと」像を作ったのは、間違いなくこの詩集です。
ふるさと
ふるさとは遠きにありて思ふもの
そして悲しくうたふもの
よしや
うらぶれて異土の乞食となるとても
帰るところにあるまじや
ひとり都のゆふぐれに
ふるさとおもひ涙ぐむ
そのこころもて
遠きみやこにかへらばや
遠きみやこにかへらばや
智恵子抄 著:高村光太郎
教科書で出会った人も多いかもしれません、智恵子抄です。
私の本棚にある智恵子抄は、母が学生の頃から持っていたものだそうで、たいへん古くて今にも崩れてしまいそうなくらいボロボロです。
学生時代から武蔵野が遊び場だったからでしょうか。
私がいちばん惹かれたのは「レモン哀歌」ではなく「あどけない話」です。
イッパイアッテナ社がある武蔵野の空を見ていると、ふとこの詩を思い出します。
あどけない話
智恵子は東京に空が無いといふ、
ほんとの空が見たいといふ。
私は驚いて空を見る。
桜若葉の間に在るのは、
切つても切れない
むかしなじみのきれいな空だ。
どんよりけむる地平のぼかしは
うすもも色の朝のしめりだ。
智恵子は遠くを見ながら言ふ。
阿多多羅山(あたたらやま)の山の上に
毎日出てゐる青い空が
智恵子のほんとの空だといふ。
あどけない空の話である。
幸せについて 著:谷川俊太郎
厳密には純粋な詩集ではなく、谷川俊太郎が幸せについて書いた一冊。
ご自身の詩をふんだんに交えながら、幸せについて数行づつ書いています。
それも散文詩のようにきれいです。
この詩にだけ掲載しているものではなく、谷川俊太郎の代表作のひとつでもある「芝生」から、この本ははじまっています。
芝生
そして私はいつか
どこかから来て
不意にこの芝生の上に立っていた
なすべきことはすべて
私の細胞が記憶していた
だから私は人間の形をし
幸せについて語りさえしたのだ
ショートソング 枡野浩一
こちらも、厳密には詩集ではなく小説です。
ただ、現代の歌人たちの短歌がふんだんに登場します。
私が趣味で現代短歌を詠むようになるきっかけになった本です。
ミラクルで奇跡みたいなミラクルで奇跡みたいな恋だったのに
「複雑な気持ち」だなんてシンプルで陳腐でいいね 気持ちがいいね
無理してる自分の無理も自分だと思う自分も無理する自分
あたりが好きです。短歌って自由でいいなって思える一冊です。
昨日うまれた切ない恋は 著:益田ミリ
こちらは川柳+イラスト、という作品。
とにかく好きな一冊です。
イラストレーターでもある益田ミリさんが、自身の川柳にイラストと説明?をつけくわえています。
ただ、現在この本は貸し出し中で手元になく、正確に中身をご紹介できないため、もう一冊ご紹介。
自分の感受性くらい 著:茨木のり子
学生時代から大切にしている詩集で、中でも表題でもある「自分の感受性くらい」は、人生の訓示として定期的に読み返しています。
暗唱もしており、特に大事にしている詩のひとつです。
自分の感受性ぐらい
ぱさぱさに乾いてゆく心を
ひとのせいにはするな
みずから水やりを怠っておいて気難しくなってきたのを
友人のせいにはするな
しなやかさを失ったのはどちらなのか苛立つのを
近親のせいにするな
なにもかも下手だったのはわたくし初心消えかかるのを
暮らしのせいにはするな
そもそもが ひよわな志にすぎなかった駄目なことの一切を
時代のせいにはするな
わずかに光る尊厳の放棄自分の感受性ぐらい
自分で守れ
ばかものよ
ブックカバーチャレンジ、いかがだったでしょうか。
少しでも興味をもって、本を手にとってくれたらうれしいです。