月ごとの、小説や詩のおすすめの一冊をご紹介していきます。9月、暦の上では秋ですね。心がしんとするようなお話が読みたいです。
おすすめの小説
大好きな金子みすゞさんの童謡集。今回は、有名なものを中心に、好きな童謡をピックアップしていきます。
まずはこの2つ。
お魚
海の魚はかわいそう。
お米は人につくられる、
牛は牧場でかわれてる、
こいもお池でふをもらう。けれども海のお魚は
なんにも世話にならないし
いたずら一つしないのに
こうしてわたしに食べられる。ほんとに魚はかわいそう。
大漁
朝焼小焼だ
大漁(たいりょう)だ。
大羽鰮(おおばいわし)の
大漁だ。浜(はま)はまつりの
ようだけど
海のなかでは
何万(なんまん)の
鰮(いわし)のとむらい
するだろう。
魚の視点で作られた2作。純粋な子どものような、みずみずしい感性に圧倒されます。短いけれど、素直で、グッときます。金子みすゞさんの詩は、こういう普段あるものを別視点で捉えてハッとさせられるような詩が多いです。
草花の身近さ、朗らかさを感じさせてくれる詩も多いです。
芝草
名は芝草というけれど、
その名をよんだことはない。それはほんとにつまらない、
みじかいくせに、そこら中、
みちの上まではみ出して、
力いっぱいりきんでも、
とても抜けない、つよい草。げんげは紅い花が咲く、
すみれは葉までやさしいよ。
かんざし草はかんざしに、
京びななんかは笛になる。けれどももしか原っぱが、
そんな草たちばかしなら、
あそびつかれたわたし等は、
どこへ腰かけ、どこへ寢よう。青い、丈夫な、やわらかな、
たのしいねどこよ、芝草よ。
たのしいねどこよ、芝草よ。素敵なフレーズですね。普段フューチャーされない芝草の目線で書かれた詩で、とても好きです。
次にこちら。
金子みすゞさんといえば、この詩を思い浮かべる人も多いのではないでしょうか?
わたしと小鳥と鈴と
わたしが両手を広げても
お空はちっとも飛べないが飛べる小鳥はわたしのように
地べたを早くは走れないわたしが体をゆすっても
きれいな音は出ないけれどあの鳴る鈴はわたしのように
たくさんな歌は知らないよ鈴と小鳥と それからわたし
みんな違って みんないい
特別好きな詩です。「みんな違って、みんないい」こういう世界で生きられたらな、と思います。
同じく、人生観、というか普段ある在り方について感銘を受けた詩が「わらい」という詩です。
わらい
それはきれいな薔薇いろで、
芥子(けし)つぶよりかちいさくて、
こぼれて土に落ちたとき、
ぱっと花火がはじけるように、
おおきな花がひらくのよ。もしも泪(なみだ)がこぼれるように、
こんな笑いがこぼれたら、
どんなに、どんなに、きれいでしょう。
悲しくて泣くでもなく、嬉しくてなくでもなく、美しすぎて泣ける詩です。まだまだ紹介し足りませんが、さいごに、いつも元気づけられている詩を紹介して本日は終わりといたします。
星とたんぽぽ
青いお空のそこふかく、
海の小石のそのように、
夜がくるまでしずんでる、
昼のお星はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。ちってすがれたたんぽぽの、
かわらのすきにだァまって、
春のくるまでかくれてる、
つよいその根はめにみえぬ。
見えぬけれどもあるんだよ、
見えぬものでもあるんだよ。