100行書きたい。
長篇小説を書きたい。
雨の日の喫茶店で読書がしたい。
そのお店は武蔵野珈琲店がいい。
よいエスプレッソマシーンを買いたい。
デザインカプチーノの練習をしたい。
珈琲豆を炒ってみたい。
一日中空想をしたい。
背広のままで空を飛びたい。
遠くへ行きたい。
免許を取ってみたい。
数か月間、海外で仕事をしたい。
読書会を開きたい。
演劇はなるべく多く観に行きたい。
帝国劇場に行きたい。
オペラなんかも観てみたい。
とびきりおいしいごはんを食べに行きたい。
そのときは、大切な人と一緒にいたい。
ごはんを食べて、おいしかったね、と話がしたい。
遠くへ行きたい。
登山に行きたい。
山に登って、おいしい空気を吸いたい。
そのときは、大きなリュックサックを背負っていきたい。
暮れていく夕日に想いを馳せたい。
夜は火を見ていたい。
火を見て、もの悲しい気持ちになったりもしたい。
そのときは、あの人のことを思い出したい。
朝日なんかも見てみたい。
世界がびっくりするくらい広いと再確認したい。
遠くへ行きたい。
一生懸命仕事がしたい。
新しいこともたくさん覚えたい。
感受性を大事にしたい。
知識と教養を育みたい。
こつこつと、大事なものを丁寧に積み上げていきたい。
たくさんの人と出会いたい。
喧嘩をして、仲直りがしたい。
叶えたい、理想のことについて語りたい。
理想がどうやったら叶うかたくさん考えたい。
遠くへ行きたい。
よい人間を育てたい。
たくさん褒めて、たくさん言い聞かせたい。
知識と教養と礼節を大切にしたい。
そうして、よい人間ができあがったらよい。
よい人間が、またたくさんのよい人間を育んだらよい。
そのために、自分もよい人間でありたい。
よい人間であるために、どうしたらよいかよくよく考えたい。
たくさんの人から学びたい。
そうして、優しさのようなものがたくさん増えたらよい。
遠くへ行きたい。
100行書きたい。
社員旅行に行きたい。
行先は沖縄がよい。
白い雲と、青い海が見たい。
その晩はたくさんお酒を酌み交わしたい。
ふだん話せないいろいろなことを話したい。
話して、次の日には忘れていたい。
そのまま透明ななにかで包んでおきたい。
でも、ふとしたときにときどき取り出して眺めたい。
遠くへ行きたい。
春には花見をしたい。
桜の木の下で、とびっきりのお酒を飲みたい。
夏は花火をしたい。
火を囲んで、あのコと静かに語りたい。
秋は月見をしたい。
誰かと月を見るのは特別なことだと感じたい。
冬は、鍋を囲みたい。
あたたかい鍋の、やわらかい幸せの味を感じたい。
過ぎ去っていく時間を感じていたい。
遠くへいきたい。
100冊の本を読みたい。
100句の短歌や俳句を読みたい。
100編の詩を読みたい。
100曲の歌を聴きたい。
100本を映画を見て、
100作の演劇を観たい。
100種類のお酒を飲んで、
100人の美しい横顔を見たい。
100行を書く速度で、
遠くへいきたい。
立派な会社をつくりたい。
関わる人や社会が幸せになればよい。
たくさん仕事をして、
たくさんお金をかせいで、
ちいさくても立派なオフィスを構えたい。
仕事の合間には井之頭公園で散歩をしたい。
人に好かれる会社がよい。
そこには、随一的で信頼できる仲間がいてほしい。
怠けず、あきらめず、丁寧な人たちがよい。
遠くへいきたい。
遠くへ行きたい。
遠くへ行きたい。
遠くへ行けるのは天才だけだ、といったのは誰の言葉だったか。
買える分だけの切符を買って列車に飛び乗っても、
ただお尻が痛くなるばかりで、ちっとも遠くへ行けやしない。
遠くへ行きたい。
遠くへ行きたい。
どこよりも遠くに、何よりも高くに行けるのは、
それは想像力の翼だけだ。
100行書きたい。
100行分の想像力で、わたしは遠くへ行ってしまいたい。