ブックカバーチャレンジ!

ブックカバーチャレンジは読書文化の普及に貢献するため、自分の好きな本を1日1冊、Facebook上で7日間投稿するというものです。7日間の軌跡をまとめてみました。

day1

家出のすすめ 著:寺山修司

何度も読み返して、もう好きか嫌いかでもなくなってしまっているこの本。
学生時代、早稲田大学第二文学部の過去問で、この本のなかの「涙ぐむジル」という短編に出会ったのですが、この出会いは僕の人生を大きく変えました。
この本は、「家出のすすめ」、「悪徳のすすめ」、「反俗のすすめ」、「自立のすすめ」の4編で構成されているのですが、「涙ぐむジル」は「自立のすすめ」の中のひとつです。

人間は、一つの言葉、一つの名の記録のために、さすらいをつづけてゆく動物であり、それゆえドラマでもっとも美しいのは、人が自分の名を名乗るときではないか…。

という文中の一説に強い納得感があり、思えばイッパイアッテナでメンバー含め顔を出して名乗りを上げ続けているのは、根底にこの考え方があるからかもしれません。

day2

女生徒 著:太宰治

教科書ではじめて読んだときから、太宰治は大嫌いな作家でした。

攻撃的で女々しく、なんか鼻につくやつ、そんなイメージでした。
特に、代表作である人間失格などは、読んでからまる1か月間ずっと気持ちが落ち込みました。

それでも、一通りは読んでやろうと著書を読破し続けるうちに、くやしいが彼のことが好きになってしまっている自分に気が付きました。
明確に、これは好きだと強く思ったのは、この「女生徒」でした。

太宰治が得意の女性目線のモノローグ調で書き綴られたこの作品は、10代の少女の葛藤と瑞々しさがじんわりと胸を打ちます。
未だにこの作品を読んで心を動かされる自分自身に、まだ感受性が死んでいないな、とほっとしたりします。

ぽかんと花を眺めながら、人間も、本当によいところがある、と思った。花の美しさを見つけたのは、人間だし、花を愛するのも人間だもの。

という一文がお気に入りです。

day3

わたしと小鳥とすずと 著:金子みすゞ

金子みすゞが好きです。

朴訥で、美しくて、やさしい世界。

読み終わったあとは、こんな人になりたいな、やさしい人になりたいな、といつも思うのです。

日々の生活で忘れてしまいそうになる志を、思い出してくれる一冊です。

私が両手をひろげても、
お空はちっとも飛べないが
飛べる小鳥は私のやうに、
地面を速くは走れない。
私がからだをゆすっても、
きれいな音は出ないけど、
あの鳴る鈴は私のやうに
たくさんな唄は知らないよ。
鈴と、小鳥と、それから私、
みんなちがって、みんないい。

day4

桜の園 著:チェーホフ

戯曲を読むようになったきっかけは、イプセンの人形の家でしたが、どっぷりはまったきっかけは、この本でした。

斜陽の美しさ、文章全体で綴るメッセージの強さが、強烈に印象に残っています。

登場人物の名前がとにかく一致せず、何度もこれ誰だっけ?となるので、登場人物の名前と相関図を紙に書きだして端に置きながら読んだことを覚えています。
大学ではじめてやったオリジナル演劇の役名を自分でつけていいといわれ、ロパーヒンと、この作中の商人の名前にしたことをよく覚えています。

アメリカ人しかいない中で日本人がひとりだったので、日本人の名前がよくわからないから日本人の名前(役名)を自分でつけて、と言われてたんだろうな…と、1年くらいたってから思い至って恥ずかしさでのたうちまわったのもセットで、忘れられない作品です。

day5

ぼくのメジャースプーン 著:辻村美月

私がいちばん泣ける小説は何か、と問われたら、この本の名前を上げます。
この本の、特定のシーンをよく思い出しただけですぐ泣いてしまい、人に紹介するときにもうっかり泣きそうになるので、なかなかうまくお勧めできなかったりします。

小学生が主人公の、すこしだけSF(超能力)がはいった作品で、児童書のようなのですがぜひ大人の人に読んでほしい一冊です。

夏目漱石の「こころ」がおはなしのベースにあるように感じます。
(「先生」と主人公とのおはなしで、「先生」の過去の悔恨と、愛とは?というテーマが共通しています。)

印象的なシーンや言葉がいくつもあるのですが、ネタバレになってしまうのでここでの紹介は控えます。

心のデトックスがしたいな、と思ったらぜひ読んで涙を流してすっきりしてほしいな、と思うのですが、自分の泣きポイントが人様と同じか自信はありません…。

day6

銀翼のイカロス 著:池井戸潤

スカッとするなら、この一冊です。

金融ミステリーという新ジャンルの金字塔、池井戸潤。
この本は、かの有名な半沢直樹シリーズの第四弾です。

大きな航空会社の経営破綻とその立て直しをめぐり、銀行マンと政治家が対立するお話です。

半沢直樹の銀行員としてのプライドは、仕事を真剣にする人たち全員がもっているプライドで、このプライドの守り方がとにかくかっこいい。

皮肉屋で弁論が強い半沢直樹の、聞きほれてしまうような相手への追い詰め方は、ウィットに富んでおり実に大きなカタルシスを生みます。

ほかのシリーズを読んでいなくても楽しめますよ。

day7

はつ恋 著:ツルゲーネフ

恋愛小説の古典といえば、必ず名前が挙がるこの本、はじめて読んだ学生時代から20年以上たって読み返しました。
当時定価324円が値下げされて160円になっていたところを買ったのですが、ほかのさまざまな本を整理してもずっと蔵書に残っていたのは驚きです。

10代の、いびつだがそれが正常と言わんばかりのはつ恋の話。逆に、自分が年を取って俯瞰で見れるようになった今のほうが、強く共感できるように思います。

ああ、青春よ! 青春よ! お前はどんなことにも、かかずらわない。お前はまるで、この宇宙のあらゆる財宝を、ひとり占じめにしているかのようだ。憂愁でさえ、お前にとっては慰なぐさめだ。悲哀でさえ、お前には似つかわしい。お前は思い上がって傲慢で、「われは、ひとり生きる――まあ見ているがいい!」などと言うけれど、その言葉のはしから、お前の日々はかけり去って、跡あとかたもなく帳じりもなく、消えていってしまうのだ。さながら、日なたの蝋ろうのように、雪のように。……ひょっとすると、お前の魅力の秘密はつまるところ、一切を成しうることにあるのではなくて、一切を成しうると考えることができるところに、あるのかもしれない。ありあまる力を、ほかにどうにも使いようがないので、ただ風のまにまに吹ふき散らしてしまうところに、あるのかもしれない。我々の一人々々が、大まじめで自分を放蕩者と思い込こんで、「ああ、もし無駄に時を浪費さえしなかったら、えらいことができたのになあ!」と、立派な口をきく資格があるものと、大まじめで信じているところに、あるのかもしれない。

なるほど確かに、すべて言う通りです。

ブックカバーチャレンジ、いかがだったでしょうか。
少しでも興味をもって、本を手にとってくれたらうれしいです。