国立科学博物館(常設展)が素晴らしい件。そして南方熊楠と情報処理。

先日家族三人で国立科学博物館(常設展)に行ってきました。科博は私が学生時代に好きだった美学の先生が2004年にリニューアルした際に「国立科学博物館(常設展)の展示は非常に考えられていて良いですよ〜」と嬉しそうに話していて、その時に行って感動したのを覚えているのですが(その時は結婚前の奥さんと行った)、10年以上経って(子供も出来て!)行ってみたら、改めて感動してしまいました。感動のあまり年間パスポートも購入してしまいました。だって年パス1500円ですよ!

国立科学博物館の魅力は「ヨシモトコレクション」と呼ばれる約400点の動物の剥製や(ここの展示が私は好き)、トリケラトプスの実物の化石、子供と親が一緒に楽しめる「コンパス」など、色々素晴らしく、正直1日じゃ回れないコンテンツ量です。上記の展示も久々に行って改めて心踊ったのですが、今回行って最も感動したのは常設展内の企画展示室で行われていた「南方熊楠-100年早かった智の人-」の展示で、これが本当に素晴らしかったです。

南方熊楠という人

南方熊楠という人がどういう人であったか、私が知ったのは水木しげるの「猫楠」くらいで(言わずと知れた名作ですね。読んでいない方は是非。)自然史や民俗学など幅広い分野で活躍した人、それとかなり破天荒な人という浅い知識しか無かったのですが、今回の展示で左記の部分はもちろんとして、熊楠の「情報の編集や設計」に焦点が当てられていて、そこがかなり自分的にはツボでした。

情報提供者としての熊楠

展示の一文にも

南方熊楠は、森羅万象を探求した「研究者」とされてきましたが、近年の研究では、むしろ広く資料を収集し、蓄積して提供しようとした「情報提供者」として評価されるようになってきました。本展覧会では、熊楠の活動のキーアイテムである日記・書簡・抜書(さまざまな文献からの筆写ノート)・菌類図譜を展示。“熊楠の頭の中をのぞく旅”に誘います。

とあるように、まさしく「熊楠の頭の中をのぞく」工夫がなされていました。特に興味深かったのが熊楠が執筆した「十二支考」の構想メモの展示で、「腹稿」と呼ばれる、そのメモを見るに、今で言う「マインドマップ」を、より高度に発展させたようなマップ上のメモが展開されていて、残念ながら私には書かれていることの半分もわかりませんでしたが、熊楠の思考の勢いのようなものはバシバシ感じることができ、根源的な智のほとばしりのようなものに触れることが出来て、ちょっと涙ぐむくらい感動しました。

ビジュアライズとハイパーリンク

熊楠の「腹稿」を見ていて思ったのは、人間の思考が創造的に加速化する時に情報をビジュアライズすることと、それを多層的につなげることは、かなり重要な意味を持つのだろうということでした。熊楠は幼少期から本草綱目(漢文の百科事典のようなもの)を筆写し、生涯にわたって多数の図譜を残しています。自然と情報を「図解化」して捉え、図解化することで、さらに思考の深まりを見せていったように思うのです。また、それらの「目録」を作り情報を他とつなげて捉えることで、相互に響き合う情報の在り方を模索した人なのだろうと。そういった意味では、展示にもありましたが、まさしく今日のインターネット空間の情報処理と近いことを100年も前に実現していた人なのだと思います。

企画展示は3月までやっているようです。今回は家族で行ったのもあり、あまり時間を取れなかったので、個人的にもう一回行ってみて、もう少し深く熊楠の思考に触れてみたいと思います。