“ふつうじゃない”がふつうにある
“ふつうじゃない”がふつうにある

長谷川 愛奈はせがわ あいな“2022卒業

Speech is silver, silence is golden.

“ふつうじゃない”がふつうにある

6畳一間の私の世界

みなさんが思う「世界」の定義はなんですか?地球とか、でしょうか。

10代の頃の私の世界の定義は、「自分の手が届く範囲、目に見えているもの、捉えられるもの」でした。

私は、中学1年生から学校に行かなくなりました。理由は、いろんな嫌なことから逃げるためです。逃げるために、自分の部屋から外に出なくなりました。

そこから、私の世界は6畳くらいの部屋だけになりました。茶色のカーテン、学習机、緑色のチェックのカバーがかけられたベッド、ハートの赤いローテーブル、大きな犬のぬいぐるみ、そしてパソコン、これが私の唯一の世界になりました。

部屋の扉の向こうは、本当に存在しているのかを考えたこともありました。だって、私はここにしかいないから。外のものを見ることをやめたからです。見ることをやめたものは感じることもできなかったので、扉の向こうに世界が存在すると、きちんと目を向けることが当時の私にはできませんでした。

6畳の私の部屋の中だけが私の世界で、唯一の現実でした。

無限の世界への扉

でも、私の手が届く範囲で、唯一無限に広がっていたものがあります。それはパソコンでできるオンラインゲームです。どこまでも広がる草原、きらきらな海、深く雪が積もった山、真っ赤に輝く溶岩、最強のモンスター。そこで出会い一緒に戦った魔法使いの友達。ダメージを回復してくれた精霊の友達。守ってくれた戦士の友達。

私は、学校に行かずに自分の部屋に閉じこもっていたわけではなく、確かに、風の温かさも、夜の冷たさも、街の匂いも感じていました。ゲームをしている時の私は、6畳の子供部屋には居ませんでした。たくさんの世界を冒険して、たくさんの人と話して、それが私の世界の定義になっていきました。

そしていつしか、大好きなその世界を自分でも生み出してみたいと思うようになっていました。「空想を形にしたすごい人たち」を感じることで、きちんと扉の向こう側に目を向けられるようになったと、思います。

長谷川 愛奈 長谷川 愛奈

空想をカタチにできるお仕事。

イッパイアッテナの人たちは、かつて私が憧れた、そして今も憧れている「空想をカタチにできるすごい人たち」でした。

そんな人たちが、こんな私を、新しい世界での冒険の旅の一員にしてくれました。

強い意志で先頭に立ち続けてくれる、ナイト。テレパシーみたいに想いを受け取ってデザインにしてくれる、サモナー。どんな機能も実装してくれるエンチャンターやアルケミスト。楽しい時もつらい時も一緒にいてくれるプリースト。必ず後ろに居てくれて、ピンチの時に会心の一撃の一矢を放ってくれるアーチャー。
他にも、たくさん。

どのジョブも、1人じゃスライムくらいしか倒せないかもしれないけど、皆でギルドを作ってパーティーを組むと、ラスボスにも挑めます。(※ソロでラスボスに挑める猛者だらけという側面もあります。)

それぞれの個性が持っている、弱さと強さ。そのどちらも否定せずに、パーティーを組むことで補いあうことを認めてくれる場所で、ぜーんぶ合わせて最強になれてしまいます。

「空想をカタチにできるすごい人たち」は重い扉の向こうの世界と思っていたのに、今では私の手の届く範囲にあり、目を背けたいものでもなくなり、もっと見ていたいものになりました。

私がこの世界でWEBディレクターとしてディレクションをすることで、クライアントやユーザーの未来に影響し、小さくとも何かのきっかけとなっていると思っています。私は、「つくる」ことで、誰かの人生が少しでも変わることに、責任を感じます。時にはその責任や期待が重たく感じることもあります。

私が、ゲームに助けられてきたからこそ、その重みや期待を強く感じられているのだと思います。モニターの中でたくさんの世界を冒険し、温度や匂いを感じられたのは、誰かが描いた空想を形にしたからです。どこかの誰かの知らない人が作ったものが、私の人生や価値観を変えてくれたから。

そしていつしか私は、暗い顔でモニターを見つめている誰かにとっての、「空想をカタチにできるすごい人たち」のうちの1人になりました。だから、稚拙な文になってしまいますが「一生懸命がんばりたい」のです。

何処へでもいける。何にだってなれる。

私は、インターネットを通して、13歳の私が感じた匂いと同じものをだれかに届けたいと思っています。どんなに暗い部屋にいても、狭い場所にいても、インターネットは世界を無限に広げてくれます。

匂いや風だって、届けられるはずです。

こんな私が、6畳の部屋から、勇者にも、魔法使いにも、戦士にも、何にだってなれたから、新しいこのイッパイアッテナという世界で、最強の旅の仲間と一緒に、まだ知らないどこかのだれかを最強の勇者に、魔法使いに、戦士に、していきたいのです。

2022年3月28日
長谷川 愛奈

長谷川 愛奈

Profile

長谷川 愛奈

長谷川 愛奈

ディレクター

長谷川 愛奈(はせがわ あいな)1994年11月30日生まれ。ディレクター。ほんとはゲームだけして生きていきたいけど、おとなはちゃんとしないといけないということを最近学んだので、一生懸命仕事をしている。

“ふつうじゃない”がふつうにある